先生は私のおでこに、痛くもないデコピンをくらわし、また原稿用紙に戻っていく。

「ん?待てよ。これ使えるな。」

そう言って、また何かをカリカリと、書き始めた先生。

『これ使えるな。』の゛これ゛とは一体何を指すのか。

私はこっそり、原稿用紙を覗いた。



ー『もう、先生なんか嫌い‼』

ー『待てよ。』

ーすると先生は、私を後ろから抱き締めてくれた

ー『今度、海に行こうか。』

ー『本当?』



「ぎゃああ‼」

思わず悲鳴をあげてしまった。

そこには、先程目の前で起こった出来事が、繰り広げられていた。

「あっ、覗き見したな。」

当の本人は、逆に嬉しそうだ。

「なんでさっきの事書いてるの‼」

「参考にしろって言ったのは、そっちだろ。」

「あれは!」


あれは私に興味が無さそうな先生を、なんとか惹き付けたくてやったことなのに!


「なあ、藤沢。」

「はい?」