「じゃあ、またな。気をつけて帰れよ。」

先生はお目当ての本が見つかったらしく、それを片手にレジへと向かおうとした。


まずい!


咄嗟に先生の腕を掴んだ瞬間、私のお腹の虫がぐぅ~と鳴った。

そんな時に、先生と目が合ったものだから、だんだん恥ずかしくなって、顔が赤くなっていくのがわかった。

「なんだ藤沢。腹が減ってるのか。」

「そ、そ、そうみたい……です。」

すると先生は、自分の腕を掴んでいる私の手を離した。

一瞬、先生の温かい手が、私の手を握ってくれたような感覚に陥った。

「待ってろ。これ会計してくるから。」

そう言って先生は、私から離れて行く。


“待ってろ”

先生のその一言に、心臓がトクントクンと鳴り出す。

私、もう少しだけ先生と一緒にいて、いいのだろうか。

そんな期待が、私の中で膨らむ。