何気なく学校の教科書を開いてみた。

国語の教科書。

去年は、先生が教えてくれていた科目。


今は産休明けの先生が教えてくれているし、教科書自体、平塚先生が教えてくれた物とは違うけれど、目を閉じれば先生の授業風景を思い出す。




『じゃあ、ここを藤沢。読んで。』

『は、はいっ!』

立ち上がる私。

教科書二頁分を、スラスラと読み上げる。

『OK。ありがとう、藤沢。』

その先生の笑顔が、頑張ったご褒美だ。

一人ニンマリと、教科書で顔を隠す。

すると、いつの間にか先生が目の前に。


まずい。

ニヤけてたの、バレたかな。

教科書を置き姿勢を正すと、何故か先生は私の前にしゃがみ込む。

『藤沢の声、いつ聞いてもいいな。』

えっ?

先生?

『その声、俺だけのモノにしたい。』

そして、迫ってくる先生。

『せ、先生?』


教室だと言うのに、近づきやしないか?