「やったぁ!」

そんな私を、先生は荷物を置きながら、じーっと見つめる。

「なに?」

「いいや。」

ゴホンと咳をして、先生はパソコンの前に座った。

「ちょっと、ここに座れ。」

「はい。」

私は言われた通りに、先生の隣に座る。


「藤沢。よく聞けよ。」

「はあ。」

真剣な顔をしている先生に、ちょっとだけドキドキする。

「実は俺、今出版社のコンテストに応募しようと、小説を書いている途中なんだ。」

「小説!?」


昨日のあの原稿用紙に書きなぐってた文章。

あれ、出版社に応募するものだったんだ。

そんな大切な物を書いていたなんて。

人の夢が現実になるかもしれないなんて、私は不思議な気持ちに陥っていた。


「だから、夏休みの間いてもいいって言ったけれど、あまり構ってやれないと思うんだ。」


自分の夢が叶うかもしれない瀬戸際に、久しぶりに会った元教え子が無理やり押しかけて来て。

なのに先生は、なんて優しい人なんだろう。