「おまえん家の電話番号、何番?」

「えっ?」

訳もわからずに、番号を教える。

すると先生は、即行私の家に電話を架けた。

でも繋がらない。

「先生、今うちの親、どっちも仕事だからいないよ。」

「そうか。」

しばらく架けて、私が言ったことが本当だと知ったのか、先生は電話を切った。

「はぁぁぁぁ。」

深いため息をつく。

「先生?」

「おまえには、参ったよ。」

壁に頭をつけて、ぐったりする先生。


「迷惑かけないから。」

私は必死だった。

「塾も毎日、行くから。」

とにかく先生の傍にいたかった。


期待と不安の中、壁と腕の間から覗く先生の視線に、ドキッとした。

「本当だな。」

「うん!」

ドキドキしながら待っていると、先生はおもむろに私のボストンバックを持ち上げた。

「先生?」

「仕方ないな。夏休みの間だけだぞ。」

私は嬉しさのあまり、両手を大きく叩いた。