「やっぱりさ。お前を見ると、去年まで俺の授業を真面目に聞いていた、制服姿が思い浮かぶんだわ。」

「……はい。」

「だから、勉強教えるのはいつだって、教えてやる。けれど、俺の部屋で恋人ごっこするのは、これっきりな。」


恋人ごっこ。

しかもこれっきり。


「藤沢?」

その時の先生は、さぞかし困ったかもしれない。

返事が無く覗きこんだ私の顔は、目に涙をいっぱい溜め、鼻水は出そうになり、口は“へ”の字に曲がっていたからだ。

「おまえ……」

「有難うございました!!」

私は大きな声で頭を下げると、駅に向かって猛ダッシュを決めこんだ。


「藤沢!!」

遠くから先生の声が聞こえる。

けれど無視した。


悔しかった。

付き合えなくてもよかった。

期間限定でも、それでよかった。

遊びでもよかった。

セフレでもよかった。


でも返ってきた言葉は、“恋人ごっこ”