先生の言うことは、尤もだと思った。

でも少しだけ悲しく思うのは、どうしてだろう。


「もし、想像できないって言うのなら、」

私は、先生のTシャツの袖を掴んだ。

「私で試してみたら?」

先生が私をじっと見る。

「え?」


もう、止まらなかった。

少しずつ先生に近づいた。


「藤沢?」

もう少しで私の唇が、先生の唇と重なりそうになった。

「待てって。」

先生の手が、私の肩を掴んだ。

「落ち着けよ。」

「落ち着いてるよ。」

動じない私に、先生は急いで煙草の火を消した。


改めてこっちを向いた先生は、私を見ているようで、見ていない。

「……俺は去年まで、お前の教師だったんだぞ。」

「うん。」

「お前は、そんな奴を……」

私は何も言わずに、先生を抱きしめた。

「今は、教師と生徒じゃない。」

「藤沢……」

「ただの、男と女だよ。」