私は隣に座る先生を、チラッとみた。

確か先生は、私よりも10歳年上のはず。

30歳手前の男の色気が、まだ子供の私との間に、何とも言えない壁を作っているような気がした。

「先生。」

「ん?」

「あのさ……」

彼女、いる?と聞きかけた時だった。



ピンポーン



玄関の、呼び鈴が鳴った。

「は~い。」

先生は私の出そうとして出せなかった言葉なぞ気にせず、玄関に向かった。

「來々軒で~~す。出前、お持ちしました。」

遠くで皿を置く音がする。

15分もしないうちって、10分ぐらいで着いたじゃないか。

どれだけ暇だったんのよ。

言えなかった言葉を、出前のせいにしたくて、頬をプクッと膨らませた。

「ほれ。飯だ、飯。」

先生は大きなお盆に、たくさんの料理を乗せて、テーブルに持ってきた。


「なにこれ!すごい!!」

回鍋肉定食と麻婆豆腐丼を頼んだだけなのに、テーブルは一気に中華料理で埋め尽くされた。