「すみません。ご親切に送って頂けるところ。」

「あっ!いえ……」

彼女さんはうろたえながら、葉山君を見る。

「葉山、いいよな。俺が送っても。」

葉山君は、大きくため息をつく。

「藤沢がいいんだったら。」

かくして、先生に付いていくかどうかは、私に委ねられた。


「藤沢。無理しなくていいんだぞ。」

葉山君が私を気遣ってくれる。

ここで先生に行ったら、いかにも先生と特別な関係だっいて言ってるものだ。

でも……


「行こう。」

差し出された先生の手を、振り払うなんてできなかった。

私は車の外へ出ると、葉山君に深くお辞儀をした。

「ごめんなさい。自分勝手で。」

葉山君は何も言わずに、車の中に乗り込んだ。

「兄貴、車出して。」

それだけを告げて。

「いいのか?裕志。」

「ああ。本人がそれでいいって、言うのなら。」


すると彼女さんも助手席に乗って、数秒後。

葉山君のお兄さんの車は、動き出した。