葉山君が遠くに行った後、しばしの沈黙。

「本当に葉山に乗せて貰うのか?」

「わかんない。」

勢いでつい言ってしまったとは言え、随分浅はかだったと後悔した。

でもその後悔も遅かった。

葉山君は、意外に早く戻って来た。


「兄貴に許可もらった。兄貴の彼女もいるけど、気にしないで。」

やっぱり断るべきか。

ちらっと先生を見た時だ。

「よかったな。」

先生の弱々しい返事。

「じゃあ、二人とも気をつけて帰れよ。」

先生はそう言うと、私達に背中を向けて行ってしまった。


「行こう。」

葉山君は私の背中を軽く押す。

その力を借りても、私の体は動かない。

「藤沢?」


本当は動きたくない。

先生と一緒に帰りたい。

でも先生を突き放したのは、誰でもない私だ。


ほんの少しのすれ違いで、こんなにも離れてしまうんだと言うことを実感した。

「こんな事、言うべきじゃないのかもしれないけど……」