「平塚先生。どうなんですか。」

先生は、ずっと黙っている。

「先生?」


返ってくる言葉がなくて、不安になるのが半分、納得するのが半分。


「先生、まさかとは思うけれど……」

葉山君が一歩、踏み出した時だ。


「気にし過ぎだよ。」

葉山君の前に立った。

「私達、別に付き合ってるわけじゃないんだよ?」

無理に笑って見せた。

「先生とは、ほんとさっき久々にあっただけ。私、先生に憧れてたから、盛り上がったけど。それ以上何かあるわけじゃないよ。」


これでいい。

葉山君の前では。


「そうだ。葉山君、さっきのお誘い、まだ大丈夫?」

「えっ?」

「お兄さんに車で送って貰うって。」

「ああ……」


先生はそれでも、何も言わない。

先生にとっては、一夏のお遊び。

だとしたら、のめり込むだけ損をする。

「兄貴に聞いてくる。」

葉山君は、お兄さんがいる場所に走っていった。