「彼……女?」

「知らない?背の高い人だよ。海の家で一緒に働いてたよね。」

「へえ………そうなんだ。」

知らない。

明らかに私じゃない。


「藤沢、何でここまで来たの?」

「……バス。」

適当に答えた。

「バス停まで結構歩くけど、よく来るの?ここ。」

うるさいと思いながらも、小さく頷いた。

その様子を見かねた先生が、助け船を出してくれた。

「葉山はここまで、何で来たんだ?」

「兄貴の車に、乗せてもらって来ました。」

「その兄貴は?」

「あっちで、彼女と一緒にいます。」

葉山君が向いた先に、大学生らしきカップルがいた。


「藤沢、いつまでいる?よければ兄貴に言って、一緒に乗せて貰え……」

「いいよ!」

あまり話した事もないのに、怒鳴ってしまった。

「ごめん。一人で帰れるから。」

私は二人を置いて、歩きだした。


「藤沢‼」

後から先生が追いかけて来る。