ドキドキする。

先生の深い瞳に、吸い込まれそうになる。

「なんですか?」

「おまえさ、」

「はい。」

「俺ん家、来る?」

トクントクンと動いていた心臓が、大きくドキンと鳴った。


「いいの?」

「汚いけどな。」

「一人暮らし?」

「そう。」

「じゃあ、仕方ないよ。逆に男の人の一人暮らしで奇麗な部屋だったら、引いちゃうかも。」

「なんだ、それ。」

適当な会話を交わした私と先生は、しばらくの沈黙の後、歩きだした。


「先生の家、遠い?」

「うんにゃあ、この近く。」

そして私は、先生の後を付いていく。


男の人の、しかも一人暮らしの部屋に行くなんて。

もしかしたら、私、本当はイケない事をしようとしてるんじゃないか。

そう思ったら、ふと足が止まった。


「どうした?」

「私、行ってもいいのかな。本当は一人暮らしの男の人の部屋なんて……」

先生はため息をついた。

「襲わねえよ。飯食うだけだろ?」

そう言うと、先生は私の背中を、軽く押してくれた。