そうだ。私は元々、身分の低い女なのだ。

帝にまた会えるなど、願っても叶わない事なのだ。


それから、しばらくした時だ。

「橘家が、姫君の雑士女を募集している。」

父は、せかせかした様子で、私と母に伝えた。

「雑士女ぐらいだったら、はるもできるだろう。」

「それでは、はるは宮中に行けるのですね。」

母は自分の事のように、喜んだ。

「きっとはるは、姫君の役に立ちますよ。」

私は、励ましてくれた母に、感謝をした。


こうして父に連れ添って、私は橘家に赴いた。

そして、橘家に着いてみて、びっくりした。

そこには、下級貴族の姫君たちが、我先にと押し寄せていたからだ。


「これは、秀行殿の姫君も、来ていらっしゃったか。」

「これはこれは、成平殿。」

父の知り合いのようで、私は頭を下げて挨拶をした。

「お互い、位が低い故、姫君を持つと大変ですな。」

「成平殿の姫君は、おいくつで?」

「14になります。そろそろ箔をつけて、どなたかいい貴族に、貰ってほしいのですよ。」