それから3年の月日が経った。

私は、藤原秀行を父に、その妻を母に想い、公家の姫として、勉強に勤しんだ。


そんなある日の事だった。

「今度、橘家の姫君が、入内するそうだ。」

「そうですか。あそこの姫君は、それは美しいと評判ですからね。」

父と母が話していた事を、私も側で聞いていた。

「入内とは、何ですか?」

「ああ、帝の妃になる事だよ。」


私は、一瞬息が止まった。

「帝とは……今の帝の事ですか?」

「ああ、そうだよ。」

あの美しい方が、妃を迎える。

私の胸は、強く締め付けられた。


「はるも、綺麗に育ちましたけど、この家では、位が低すぎますからね。」

母は、はぁーっとため息をついた。

「おまえ、よもやはるを、入内させたいと言うのか。」

「あら、姫を持つ貴族たる者。皆、同じ考えです。」

父と母は、睨み合った。

「……いいのです。私は、本当の父と母の子では、ありませんし。」