そしてまた、その公達は悲しそうな顔をした。

「おいで。」

手招きをされて、私は公達の顔を見た。

どこか、父さんに似ているような気がした。

「一人なら、うちに来るといい。私には、子供がいないんだ。お互いいない者同士、仲良くやっていこうじゃないか。」

私は、その公達が悪い人には見えなくて、うんと頷いた。


「さあ。新しい家に連れて行こう。」

私は、その公達について行った。

「名前は?」

「はる。」

「私の名は、藤原秀行だ。まあ、藤原氏の中でも、一番下っ端だけどな。」

藤原氏と言われても分からない私は、このおじさんが下っ端でもよかった。

とにかく、美味しい物をたらふく食べたかった。


しばらくして、おじさんの家に着いた。

「まあ、おまえ様。この女の子は?」

「はると言ってな。両親を亡くした子だ。今日から、ウチの子にする。」

「はあ。」

たぶん、このおじさんの奥さんだろう。

この人は、私を受け入れてくれるのかな。

「はる。今日から、私達を本当の両親だと思ってな。」

私はその日から、藤原秀行の娘になった。