「ほら、帝からのお菓子だ。有難く思うんだぞ。」

私は震える手で、そのお菓子を受け取った。

白や緑、黄色や桃色のお菓子。

一口食べてみると、甘くて美味しかった。

「美味しい。」

「それはよかった。」

帝はそう言うと、優しく微笑んでくれた。

そのお姿が、光り輝いているようで、眩しかった。


「そろそろ出せ。」

帝の一声で、牛車は動き出した。

そして通り過ぎると、皆、見送りながら自分の生活に、戻って行った。

ただ一人、まだ夢の中に漂っている私は、帝の牛車を小さくなるまで、見送った。


やがて牛車が見えなくなり、私がお菓子をもう一つ食べた時だ。

「帝からお菓子を頂くとは、運の強い子だ。」

振り返ると、小太りの公達が、私の側に立っていた。

「一人か?父や母は?」

「いない。両方とも、流行り病で死んだ。」

その瞬間、公達は悲しそうな顔をした。

「……そうか。今は誰と住んでいるのだ?」

「一人で住んでいる。」