「何だ?おまえ。その犬、おまえの物か?」

私は、小さくうんと頷いた。

「だったら、さっさと連れて行け。」

私が犬を抱えて、列に戻ろうとした時だ。


「待て。」

牛車の中から、声がした。

「前を開けよ。」

「はっ!」

そして牛車の中が開いた。

その瞬間、私は目を丸くした。

牛車の中にいたのは、それはそれは美しい人だったからだ。


涼し気な目元、スッと伸びた鼻筋、陶器のような肌、果実のような赤い唇。

どれをとっても、同じ地に生きている人とは思えなかった。

そうだ。きっと、住む世界が違うのだ。

私はしばらく、その美しい人に、見とれていた。


「随分、やせ細った女子だ。見ていて、可哀相に思う。これを与えよ。」

するとその美しい人は、自分の側にあったお菓子を、家来に渡した。

そしてその家来は、私にそのお菓子をくれた。