その時だった。

「結子様、よかったですね。」

女房の一人が、結子様を励ましている。

「あちらの局には、物語を書く女房がいるだとか。ですが帝は、漢詩の方に興味がありそうですね。」

「ああ。晴子を女房して、よかった。」

すると結子様は、私の方を向いて、ニコッと笑って下さった。

「ありがとうございます。」

「明日は、失敗せぬように励め。」

「はい。」


そうか。帝のお渡りを、少しでも多くする為に、私は呼ばれたのだ。

その為には、明日頑張らないと。

私は目を閉じて、自分の気持ちを整理した。


翌日、帝は約束通り、結子様の局にやってきた。

「どうだ?晴子、漢詩は準備してきたか。」

いつものように、結子様の隣に座って、私に話しかけて下さる帝。

一つ違うのは、私がお二人の目の前に、座っている事だ。

「はい。準備は、整えてございます。」