「晴子……よい名だ。」

名前を褒めて下さった。

「ありがとうございます。」

ああ、よかった。

また帝と会えた。

しかも、名前を覚えて下さっていたなんて。

嬉しい。


そんな事を思うと、涙がホロッと出た。

慌てて涙を拭くと、帝は私の前で膝を着いてくれた。

「泣いているのか。」

「いいえ。」

顔を上げると、またホロリと涙が出た。

どうしよう。目の前に帝がいらっしゃる事が、こんなにも嬉しいなんて。

「いや、泣いているではないか。私が何かしたか?」

「いいえ。何も、何もしておられません。」

「そうか。」


すると奇跡が起こった。

帝が、私の涙を拭いてくれたのだ。

「帝……」

そして帝は、ニコッと笑うと立ち上がり、結子様の元へ行ってしまわれた。