そんな、絶望の中にいた時だ。
外がガヤガヤし始めて、私は本当に久しぶりに、外に出た。
「帝の行幸があるよ。」
「久しぶりだな。帝の牛車を見るのは。」
帝と言うのは、この平安京の一番奥に住んでおられる、偉い方なんだとか。
幼い頃に、一度母さんと、帝の行幸を見たけれど、それ以来だ。
もうすぐ死ぬかもしれない私は、冥途の土産に、見ておこうかと思った。
「もうすぐ通るよ。」
その掛け声と共に、私は人波をかき分け、列の一番前に立った。
すると、角を曲がった牛車が、こちらに向かって来た。
「おお、帝が手を振っておられるぞ。」
「そんなの、見えるのかね。」
牛車の中は見えないと言うのに、影は見えたとか、手を振っておられるのが見えたとか、皆嘘ばかり。
でも、そんな事、信じたい気持ちは分かる。
私も、どうせ最後なら、帝のお姿を見て見たいと思ったからだ。
その時だった。
列から飛び出した犬が、帝の牛車の前に出て、激しく泣き叫んだ。
「こら!犬!どこかへ行け!」
牛車を動かしていた人が、犬に鞭を向ける。
その様子が可哀相で、私はその犬に、手を差し出した。
外がガヤガヤし始めて、私は本当に久しぶりに、外に出た。
「帝の行幸があるよ。」
「久しぶりだな。帝の牛車を見るのは。」
帝と言うのは、この平安京の一番奥に住んでおられる、偉い方なんだとか。
幼い頃に、一度母さんと、帝の行幸を見たけれど、それ以来だ。
もうすぐ死ぬかもしれない私は、冥途の土産に、見ておこうかと思った。
「もうすぐ通るよ。」
その掛け声と共に、私は人波をかき分け、列の一番前に立った。
すると、角を曲がった牛車が、こちらに向かって来た。
「おお、帝が手を振っておられるぞ。」
「そんなの、見えるのかね。」
牛車の中は見えないと言うのに、影は見えたとか、手を振っておられるのが見えたとか、皆嘘ばかり。
でも、そんな事、信じたい気持ちは分かる。
私も、どうせ最後なら、帝のお姿を見て見たいと思ったからだ。
その時だった。
列から飛び出した犬が、帝の牛車の前に出て、激しく泣き叫んだ。
「こら!犬!どこかへ行け!」
牛車を動かしていた人が、犬に鞭を向ける。
その様子が可哀相で、私はその犬に、手を差し出した。