そんなある日、私は結子様に呼ばれた。

「どうじゃ、はる。本読みは順調か?」

「はい。お気遣いありがとうございます。」

私は内心、ドキドキしていた。

何か気の障るような事をしたら、今度は張り付けだけでは済まないような気がしたからだ。


「ところではる。そなたに良い話がある。」

「良い話?」

嫌な予感がした。

「何でしょう。」

「そなた、妾の女房にならないか。」

「えっ!?女房?」


女房と言えば、結子様の身の回りの世話をする人。

もちろん、帝がいらした時も、側で世話をしなければならない。


「一人の女房が、身ごもってな。里に預ける。その代わりに、女房になって欲しい。」

「何故、私なのでしょう。」

率直な意見だ。

結子様は、私が身分の低い女だと言う事を、知っているはず。

「そうじゃな。この前、木にはりつけたおわびじゃ。」

「いえ、そんな事……」