「はい。」

「その時の、しっかりした受け答えを聞いて、この娘ならば左大臣の娘でも通じるだろうと思ったのだ。」

隣で聞いていた父も、うんうんと頷いている。

「どうかな。納得できたかな。」

「……はい。」


私がそう答えると、父も秀裕殿も一安心したようだ。

「よかった。左大臣家の娘ともなれば、公家の公達から引く手あまたに、結婚の話が出るぞ。」

秀裕殿がそう言った時だ。

急に、父の顔が寂しそうになった。

「そうか。はるももう、結婚相手を決められる歳になったのか。」

「父上?」

父は、寂しそうに笑った。

「いやな。はるが嫁に行くのは、この家からだと思っていたから、なんだか寂しくてのう。」


その時、私は不安になった。

いいの?このまま、養女の話を受けてしまって。

確かに、秀裕殿の養女になれば、いい嫁ぎ先が見つかるかもしれない。

でも、それじゃあ、私を引き取って下さった父は、どうなるの?