その一言で、帝は私が身分の低い女だと、知ったようだった。

ううん。本当は知っていたのかもしれない。

あのお菓子をくれた事を、覚えているのなら。


「結子の雑士女なら、結子の局に来れば、そなたに会えるのだな。」

「はい。」

「なら、また会おう。」

「いつでも、お待ちしております。」

そして帝はうんと頷くと、結子様の元へ戻って行ってしまった。


そしてその代り、また私の元へ近づく人がいた。

「私は、藤原秀裕と申す。そなたの名は?」

「はると申します。」

藤原と言う事は、父の親類縁者の人なのだろうか。

「はる。帝の知り合いと言うのは、本当か?」

「あっ、いえ。まだ子供だった時に、帝からお菓子を貰っただけでございます。」

「帝から、菓子を?そなたの父は?」

私は目をパチパチとさせた。

「藤原秀行と申します。」

「なんと、秀行の娘であったか。いや、秀行には、このような大きい娘は、いなかったはず。」