「はい。覚えております。」

思わず涙が出た。

帝はそれを見て、結子様の方を向いた。

「結子。この者は、私の知り合いだ。私に免じて、はりつけを解いてはくれないか。」

「えっ?お知り合い?」

すると女房達は、バタバタと私の元に来て、紐を解いてくれた。


「帝のお知り合いとは露知らず、お許し下さい。」

女房達は、次から次へと帝に頭を下げた。

よかった。これで開放された。

私がほっとして、身体がよろめいた時だ。

帝がそっと、私の背中に手を添えてくれた。

「大丈夫か。」

「はい。」

あの美しい方が、今、私の目の前にいる。

夢みたいだ。


「そなた、名は何と申す?」

「はるでございます。」

「はるか。なぜ、結子の局にいる?」

「それは、結子様の雑士女だからです。」

「雑士女?そうか。そうだったのか。」