何か他にできるものはないかと探していると、茫然としている厚子を見つけた。

「厚子さん、どうしたの?」

「うん、これを見て。」

厚子が指刺した場所には、結子様の上着が飾ってあった。

さすがは、太政大臣の娘。

持っている上着も、高価な物ばかりだ。


すると、厚子が立ち上がって、周りをキョロキョロし始めた。

「何するの?厚子さん。」

「この上着を着てみるのよ。」

そう言うと厚子は、上着を手に取った。

「駄目よ。早く戻して。」

私は厚子が持っていた結子様の上着を、取ろうとした。

「そんな事言わないで。ほら、はるさんも。」

厚子は、別の上着を手に取ると、私の肩に結子様の上着を掛けた。

「あら、似合うじゃない?はるさん。」


その時だ。

「何をしている!?」

結子様達が戻って来たのだ。

驚いて私は、条件反射で頭を下げたけれど、結子様の上着をそのまま羽織っていた。