それが羨ましくてならない。

「あっ、帝がいらっしゃったわよ。」

厚子が、庭に膝を着いて座るのを見て、私も慌てて座った。

ちらっと帝を見たけれど、やはりお美しい。

宮中にいる方を殿上人と呼ぶのだそうだけど、その言葉にぴったりだ。


そして帝が、私の前を通る。

その瞬間、目が合った気がした。

ドキッとして、私は直ぐに下を向いた。

帝は、何事もなかったかのように、結子様の局の中に、入って行ってしまった。


「はぁー。いつ見ても、カッコいいわね。」

「そうね。」

厚子と一緒に立ち上がって、また掃除を始める。

帝、私はここにいますよ。

そう心の中で呟いても、帝には届かない。

今頃、結子様とおしゃべり等して、楽しんでいるのだろう。


「帝と結子様が、廊下に出られるわよ。」

女房達の声を聞いて、私達は庭の端に座った。