それからさほど時を置かずして、門戸を開ける軽い音がした。
「小雀」と声がする。
「ああ、いた。よかった。大丈夫ですか?」
月明かりの中で、彼は隠していた口元の黒い布を取る。
「月冴の君……。あ、佐助は?」
「無事です。じきに来ますよ」
「よかった」
「手を切られたんですね」
小雀の手を取った彼は、傷口を口にあて血を吸い、吐き出すことを繰り返した。次に水で傷口を洗い、懐から取り出した薬らしきものを塗る。
「傷口に毒が入ってはいけませんので念のため。これで多分大丈夫でしょう」
無意識のうちに身を翻したので傷は小さかった。長さは親指の半分ほどだし、血は出たけれどそれほど深くはないと思う。
ほっとした途端、涙がこぼれた。
「これくらいなら傷は残りませんよ。薬草を乾燥させて粉にし、私が作った特性の塗り薬ですからね。大丈夫よく効きます」
小雀を抱き寄せた優弦は、小雀の髪を撫でた。
「ごめんなさい……」
優弦はにっこりと頷く。
「悔しかったのでしょう? 気が済みましたか?」
小さく頷くと、彼はくすりと笑う。
(――あんなに何度もだめだと言われていたのに)
ほっとするやら申し訳ないやら。あの時、男がひとりだけでなかったら。もし佐助や彼よりも強い男だったらどうなっていたか。
彼のこの優しい手がもし……。怖くて、涙が止まらなかった。
「小雀」と声がする。
「ああ、いた。よかった。大丈夫ですか?」
月明かりの中で、彼は隠していた口元の黒い布を取る。
「月冴の君……。あ、佐助は?」
「無事です。じきに来ますよ」
「よかった」
「手を切られたんですね」
小雀の手を取った彼は、傷口を口にあて血を吸い、吐き出すことを繰り返した。次に水で傷口を洗い、懐から取り出した薬らしきものを塗る。
「傷口に毒が入ってはいけませんので念のため。これで多分大丈夫でしょう」
無意識のうちに身を翻したので傷は小さかった。長さは親指の半分ほどだし、血は出たけれどそれほど深くはないと思う。
ほっとした途端、涙がこぼれた。
「これくらいなら傷は残りませんよ。薬草を乾燥させて粉にし、私が作った特性の塗り薬ですからね。大丈夫よく効きます」
小雀を抱き寄せた優弦は、小雀の髪を撫でた。
「ごめんなさい……」
優弦はにっこりと頷く。
「悔しかったのでしょう? 気が済みましたか?」
小さく頷くと、彼はくすりと笑う。
(――あんなに何度もだめだと言われていたのに)
ほっとするやら申し訳ないやら。あの時、男がひとりだけでなかったら。もし佐助や彼よりも強い男だったらどうなっていたか。
彼のこの優しい手がもし……。怖くて、涙が止まらなかった。