「いい? 弘徽殿に知られたくないから内緒にしているんだけど。実はね、私の叔母が月冴の君の乳母なの。いまでも二条のお屋敷で女房としておそばに仕えているの」
「そうなの?」
初耳だった。
「それでね叔母から聞いたのだけれど、あの方はお子の頃から毒を飲んでいらっしゃるそうよ」
「えっ!」
「しーっ声が大きいわ」
「だ、だって」
「毒に慣れるためなのですって。だからって全ての毒が大丈夫になるわけじゃないらしいけれど。その他にも、毒に気付くように味覚を研ぎ澄ますとか色々訓練されてきたそうよ」
「どうしてそんな」
亡くなった月冴の君の母君さまは梨壺の女御さまと呼ばれ、それはそれはお美しい女性だったらしい。
帝が東宮の頃の、唯ひとりの東宮妃であったという。
梨壺の女御さまのお父上は当時の左大臣。飛ぶ鳥の勢いであったはずが、若くして病に倒れ亡くなられた。後ろ盾である父君を亡くして失意の中、梨壺の女御さまは月冴の君を産んで間もなく、力尽きたように亡くなられたらしい。
帝は後ろ盾のいない東宮を権力争いから守るために、彼を臣籍に降下した。
小雀が知っているのはそれだけだ。
「月冴の君は七歳まで宮中にいらしたの。その時、毒をもられたのよ。解毒が上手くいったからよかったものの、危険な状態だったらしいわ。それが、主上があの方を臣下に下されるきっかになった」
「そうなの?」
初耳だった。
「それでね叔母から聞いたのだけれど、あの方はお子の頃から毒を飲んでいらっしゃるそうよ」
「えっ!」
「しーっ声が大きいわ」
「だ、だって」
「毒に慣れるためなのですって。だからって全ての毒が大丈夫になるわけじゃないらしいけれど。その他にも、毒に気付くように味覚を研ぎ澄ますとか色々訓練されてきたそうよ」
「どうしてそんな」
亡くなった月冴の君の母君さまは梨壺の女御さまと呼ばれ、それはそれはお美しい女性だったらしい。
帝が東宮の頃の、唯ひとりの東宮妃であったという。
梨壺の女御さまのお父上は当時の左大臣。飛ぶ鳥の勢いであったはずが、若くして病に倒れ亡くなられた。後ろ盾である父君を亡くして失意の中、梨壺の女御さまは月冴の君を産んで間もなく、力尽きたように亡くなられたらしい。
帝は後ろ盾のいない東宮を権力争いから守るために、彼を臣籍に降下した。
小雀が知っているのはそれだけだ。
「月冴の君は七歳まで宮中にいらしたの。その時、毒をもられたのよ。解毒が上手くいったからよかったものの、危険な状態だったらしいわ。それが、主上があの方を臣下に下されるきっかになった」