いつものようにお使いを頼まれて、小雀は貞観殿にいた。
「頭中将に頂いたの」
笹掌侍が差し出した竹籠の中に粉熟が入っている。胡麻の風味ととろけるような甘味を思い浮かべ、思わずごくりと喉が鳴る。
「一緒に頂きましょう」と、笹掌侍の局に行った。
髢事件以来、ふたりは気の置けない友人である。
事件直後こそ元気がなかった笹掌侍だけれど、小雀が感心するほど早い立ち直りを見せた。お互いさっぱりとした性格なので気が合うのだろう。
「頭中将、相変わらず熱心なのね」
小雀がくすっと笑うと、笹掌侍は照れたように扇で口元を隠す。
「頭中将は、髢だってわかっても気にしないって。そんなの信じられる?」
「私は信じるわ。頭中将は男らしくて素敵な人だもの」
親友の太鼓判に笹掌侍はうれしそうに微笑んだ。
「小雀は? 好きな人はいないの?」
「うん。いないわ」
「まあ。誰とも恋文を交わしたことはないの?」
いくら親友とはいえ、だって私は夜盗だからとは言えない。
「そうなの。いつかは恋をしたいと思っているんだけどね」
恋話に花を咲かせるうち、笹掌侍は「そういえば」と声をひそめた。
「ねえ小雀、冬野中納言ってどう思う?」
思わず顔をしかめそうになった。
「どうって?」
「頭中将に頂いたの」
笹掌侍が差し出した竹籠の中に粉熟が入っている。胡麻の風味ととろけるような甘味を思い浮かべ、思わずごくりと喉が鳴る。
「一緒に頂きましょう」と、笹掌侍の局に行った。
髢事件以来、ふたりは気の置けない友人である。
事件直後こそ元気がなかった笹掌侍だけれど、小雀が感心するほど早い立ち直りを見せた。お互いさっぱりとした性格なので気が合うのだろう。
「頭中将、相変わらず熱心なのね」
小雀がくすっと笑うと、笹掌侍は照れたように扇で口元を隠す。
「頭中将は、髢だってわかっても気にしないって。そんなの信じられる?」
「私は信じるわ。頭中将は男らしくて素敵な人だもの」
親友の太鼓判に笹掌侍はうれしそうに微笑んだ。
「小雀は? 好きな人はいないの?」
「うん。いないわ」
「まあ。誰とも恋文を交わしたことはないの?」
いくら親友とはいえ、だって私は夜盗だからとは言えない。
「そうなの。いつかは恋をしたいと思っているんだけどね」
恋話に花を咲かせるうち、笹掌侍は「そういえば」と声をひそめた。
「ねえ小雀、冬野中納言ってどう思う?」
思わず顔をしかめそうになった。
「どうって?」