――それからあっという間に数週間が過ぎた。

 真樹は岡原と約束したとおり、新刊のプロットの修正をものすごい勢いで終わらせ、ものの三日で片岡からオーケーをもらった。
 そしてすぐ原稿の執筆に取りかかり、それは早くも第二稿目に入っている。

『――なんだ、麻木先生。書けるじゃないですか!』

 (かい)(てい)版の第一稿を読んだ片岡は、感心したようにそう言っていた。
 それはそうだ。真樹だってやればできる。今までやろうとしなかっただけで……。

 それに加えて、彼女は一旦書き始めると早いのだ。タイピングは中学の頃からずっとやってきているので、今ではもうブラインドタッチまでできてしまうほどの腕前である。

 ――それはさておき。

「――服は……、こんなモンでいいかなぁ。あんまり派手すぎても浮いちゃうし」

 同窓会当日の朝。真樹は寝室で姿見として使っているスタンドミラーの前に立ち、自分の服装をチェックしてみた。

 彼女が選んだコーディネートは、控えめな小花柄がプリントされた七分袖の黄色いワンピースに、デニム風のレギパン。靴はカラシ色のフラットパンプスにするつもりだ。

「場所も中学校の敷地内だし、あんまりオシャレしても仕方ないもんね」

 ヘアスタイルは、下手にいじらず無難にハーフアップにし、白いハート形のバレッタをつけた。

「――さてと、そろそろ出るかな」

 時刻は十時半。同窓会は十二時からだけれど、真樹は自転車に乗れないので中学校までバスと電車を乗り継いで行かなければならない。
 今日は祝日なので、道路事情でバスが遅れることを計算に入れて、彼女は少し早めに出ることにしたのだ。

 友達と出かけたり、新作の打ち合わせをしに行く時に使う白いキャンパス地のトートバッグを肩から提げ、キチンと戸締りをしてから階段を下り、管理人の佐伯さんに声をかけた。