熊本県宇城市松橋町
今年は蝉の鳴く声が心地好いなと、雪水冬花は風鈴の音を聞きながら父の実家の縁側で足を伸ばし、寝転がってる。
すると親戚のお姉さんが切り分けたスイカをお盆に載せて持ってきてくれた。
「はい冬花ちゃん、スイカよ」
「わあっ! ありがとうございます!」
親戚の川崎香澄はパリで活躍してるファッションモデルで、国内よりも海外の方で高く評価されてるトップモデルだ。長身でグラマーなスタイル、背中まで長い黒髪、ノースリーブにジーンズ姿がより豊満で背の高いスタイルを強調してる。
優しくてお淑やかでお転婆な女性で、自分とは正反対だと冬花は思う。
最近彼氏ができたらしくお相手は元フランス陸軍特殊部隊隊員で、今は南アフリカで仕事して遠距離恋愛してるという、香澄姉さんは冬花の隣に座って訊いた。
「学校はどう? 夏休み楽しい?」
「はい、今まで過ごしてきた中でこんなに楽しい夏休みは初めてです!」
「あらあら、どんな楽しいことがあったの?」
「いろんなことですよ! 友達とみんなで祭りに行ったり、お盆休みが終わったら湘南旅行に行く予定で、今年は夏休みをちゃんと夏休みしようって決めたんです!」
冬花はそう言って両足を浮かせた反動で起き上がり「いただきます!」と手を合わせてスイカを一切れ取り、一気にかぶりついた。
「美味しい……香澄姉さんいつまで日本にいるんですか?」
「九月の二日までよ、明日彼氏を迎えに一旦南アフリカに行くわ。八月三一日は彼氏と大学時代の友達も呼んで沖縄の小浜島で見上げるわ」
香澄姉さんは両足を伸ばして両手を後ろに置き、青い夏空を見上げながら言うと、冬花は澄み切った星屑と彗星の夜空を思い浮かべる。
「沖縄の離島! いいですね!」
「うん、彼氏と海か山にするか話し合ったらね、そしたら絶対に海にしようって言ったのよ! あたしが意見を言う前に海で星空を見上げることの素晴らしさを大袈裟に語っちゃって、あたしは軽井沢に行きたいと思ってたけど彼ったらロマンチックに主張するのよ!」
香澄姉さんは微笑みながら言う。そういえばどこかで聞いた話しだが、フランス人は自己主張が強くて絶対に自分の意志を捩曲げないという。
「冬花ちゃん、彗星の夜は誰かと見上げるの?」
香澄姉さんが訊くと、冬花はみんなの顔を思い浮かべながら頷いた。
「はい! その日はみんなで見上げる予定です!」
冬花はスマホを操作してみんなとの集合写真を見せると、香澄姉さんは慈しむような眼差しで見せる。
「あらあら青春ね、みんな素敵な目をしてるわ……冬花ちゃんの言う、夏休みをちゃんと夏休みするって……きっかけでもあったの?」
「はい……この幼馴染みの望君が、あたしと友達の光君と最初は三人で彗星を見上げようって、夏休みをちゃんと夏休みしようって言ったんです……そしたら光君が吹奏楽部辞めて居場所を無くしちゃった夏海ちゃんと出会って、夏海ちゃんの友達の春菜ちゃんや千秋ちゃんも加わって賑やかになっちゃったんです」
冬花は今日までのことを思い出して微笑むと、香澄姉さんも微笑みを返す。
「素敵なことね、それで好きな男の子もできたの?」
「はい……ずっと前から望君のことが好きなんです」
冬花は頬を赤くしてしおらしく言うと、香澄姉さんは訊く。
「その子に好きって気持ち伝えた?」
冬花は否応なしにあの日のことを思い出しながら正直に言う。
「実は……中学の時に告白されたました」
「あら? 冬花ちゃんはなんて言ったの?」
「望君、あたしに好きだって言ってくれたんですけど……その時……どうすればいいかわからなかったんです、望君のことが好きって気持ちはあったんですけど……どうすればいいかわからなくって……泣き崩れちゃったんです」
冬花にとっては昨日のことのように感じる出来事だ、告白してくれた望を傷付けてしまった罪悪感のあまりに、自分の我が儘でなかったかのように翌日も望と普通に接し、望も今まで通り接してくれた。
「あの後も望君は今まで通りに接してくれたんです。何事もなかったことみたいに……」
「そう……今はいいかもしれないけど、すれ違ったままにしておくと……いずれ取り返しがつかなくなって後悔する日が必ず来るわ」
香澄姉さんの眼差しは真剣だ、おしとやかだけど厳しい一面もある人だ。
「このままじゃいけないってわかってます……でもやっぱり怖いんです」
冬花はしゅんとしながらスイカを口にすると、香澄姉さんもスイカを一切れ取って上品に一口頬張って精一杯味わいながら言う。
「確かに怖いって気持ちもわかるわ、もしかするとその望君も同じ気持ちで悩んでると思うわよ……勇気を出して伝えてみたら?」
香澄姉さんは真っ直ぐな眼差しで見つめ、冬花は果たして自分に出来るのかどうかと自分自身に問い、唇を噛む。
「一人で思い悩まなくていいのよ、あなたにはどんな時も一緒にいてくれる友達がいる。だから……勇気を出して、望君だってきっと受け止めてくれるわ」
冬花は俯く、果たして望は受け止めてくれるのだろうか香澄姉さんは見つめて微笑みながら唐突に話題を変える。
「ねぇ……冬花ちゃんの友達ってどんな子?」
「えっ?」
冬花は顔上げて見つめると、香澄姉さんは母性的な眼差しで言う。
「聞かせてくれる? あなたのお友達や幼馴染みの望君との青春!」
香澄姉さんは話しを聞きたいらしい、冬花はいつの辺りから話そうかな? と思い浮かべながら話す。
望君は幼稚園の頃から友達なんです。いつの頃から覚えてないくらい……一番幼い頃の記憶にはもう望君と仲良くしていて、小学校六年間一緒で数え切れないくらい一緒に遊んだり、笑ったり、泣いたり、喧嘩したり、馬鹿やったりしてたんです。
そういえば! 一つ、幼稚園の頃に望君の家族と阿蘇でキャンプに行ったんです。その時、望君と二人で夜空を見上げて約束を交わしたんですよ。
あたし、大きくなったら望君のお嫁さんになるって! 望君覚えてるかな……光君と出会ったのは中学入ってからですね、一年生の時だけ望君と同じクラスで顔見知りだったんですよ。
高校入って帰る方向が一緒だったから、放課後一緒に街に寄り道したり休みの日には一緒に遊んで、お祭りに行ったりして……彗星の夜は三人で見上げるって約束したんです。
そんな時、光君が連れて来たんです……去年、吹奏楽部辞めて今年新しい顧問の先生がやってきて、吹奏楽部の雰囲気が良くなって、友達に戻ってきて欲しいって求められて悩んでる夏海ちゃんに。
夏海ちゃん居場所を無くしちゃって同じようにテニス部を辞めて、居場所を無くしちゃった春菜ちゃんと出会って……光君言ったんです。
みんなで居場所を作ろうって、それがみんなを導いてくれた。
それから春菜ちゃんと同じテニス部の千秋ちゃんも一緒になって、千秋ちゃん……春菜ちゃんとは正反対で部活でもライバル同士だったんですけど、本当は友達でいたい。
だけど素直な気持ちが伝えられなくて……一緒に勇気を出して素直な気持ちを伝え合おうねって……。
それでこの前のお祭りで、ようやく自分の気持ちを伝えられたんです。
冬花は夏空を見上げる、みんな今どうしてるかな? 香澄姉さんは母性的な女神様のように微笑んで言う。
「青春ね……羨ましいわ、その子も伝える時はきっと怖かったかもしれない、冬花ちゃんも怖いかもしれないけど……だけど、後で振り返ったらきっと素晴らしい思い出になるわ」
香澄姉さんの言葉に冬花は「あっ」と気付いてみんなそれぞれ違う形で勇気を出していたことに気付く。
そうだ、千秋ちゃんだって勇気を出して思いを伝えたんだ。千秋ちゃんだけじゃない、望君も、光君も、夏海ちゃんや春菜ちゃんだって!
今度はあたしが勇気を出す番だ!
今年は蝉の鳴く声が心地好いなと、雪水冬花は風鈴の音を聞きながら父の実家の縁側で足を伸ばし、寝転がってる。
すると親戚のお姉さんが切り分けたスイカをお盆に載せて持ってきてくれた。
「はい冬花ちゃん、スイカよ」
「わあっ! ありがとうございます!」
親戚の川崎香澄はパリで活躍してるファッションモデルで、国内よりも海外の方で高く評価されてるトップモデルだ。長身でグラマーなスタイル、背中まで長い黒髪、ノースリーブにジーンズ姿がより豊満で背の高いスタイルを強調してる。
優しくてお淑やかでお転婆な女性で、自分とは正反対だと冬花は思う。
最近彼氏ができたらしくお相手は元フランス陸軍特殊部隊隊員で、今は南アフリカで仕事して遠距離恋愛してるという、香澄姉さんは冬花の隣に座って訊いた。
「学校はどう? 夏休み楽しい?」
「はい、今まで過ごしてきた中でこんなに楽しい夏休みは初めてです!」
「あらあら、どんな楽しいことがあったの?」
「いろんなことですよ! 友達とみんなで祭りに行ったり、お盆休みが終わったら湘南旅行に行く予定で、今年は夏休みをちゃんと夏休みしようって決めたんです!」
冬花はそう言って両足を浮かせた反動で起き上がり「いただきます!」と手を合わせてスイカを一切れ取り、一気にかぶりついた。
「美味しい……香澄姉さんいつまで日本にいるんですか?」
「九月の二日までよ、明日彼氏を迎えに一旦南アフリカに行くわ。八月三一日は彼氏と大学時代の友達も呼んで沖縄の小浜島で見上げるわ」
香澄姉さんは両足を伸ばして両手を後ろに置き、青い夏空を見上げながら言うと、冬花は澄み切った星屑と彗星の夜空を思い浮かべる。
「沖縄の離島! いいですね!」
「うん、彼氏と海か山にするか話し合ったらね、そしたら絶対に海にしようって言ったのよ! あたしが意見を言う前に海で星空を見上げることの素晴らしさを大袈裟に語っちゃって、あたしは軽井沢に行きたいと思ってたけど彼ったらロマンチックに主張するのよ!」
香澄姉さんは微笑みながら言う。そういえばどこかで聞いた話しだが、フランス人は自己主張が強くて絶対に自分の意志を捩曲げないという。
「冬花ちゃん、彗星の夜は誰かと見上げるの?」
香澄姉さんが訊くと、冬花はみんなの顔を思い浮かべながら頷いた。
「はい! その日はみんなで見上げる予定です!」
冬花はスマホを操作してみんなとの集合写真を見せると、香澄姉さんは慈しむような眼差しで見せる。
「あらあら青春ね、みんな素敵な目をしてるわ……冬花ちゃんの言う、夏休みをちゃんと夏休みするって……きっかけでもあったの?」
「はい……この幼馴染みの望君が、あたしと友達の光君と最初は三人で彗星を見上げようって、夏休みをちゃんと夏休みしようって言ったんです……そしたら光君が吹奏楽部辞めて居場所を無くしちゃった夏海ちゃんと出会って、夏海ちゃんの友達の春菜ちゃんや千秋ちゃんも加わって賑やかになっちゃったんです」
冬花は今日までのことを思い出して微笑むと、香澄姉さんも微笑みを返す。
「素敵なことね、それで好きな男の子もできたの?」
「はい……ずっと前から望君のことが好きなんです」
冬花は頬を赤くしてしおらしく言うと、香澄姉さんは訊く。
「その子に好きって気持ち伝えた?」
冬花は否応なしにあの日のことを思い出しながら正直に言う。
「実は……中学の時に告白されたました」
「あら? 冬花ちゃんはなんて言ったの?」
「望君、あたしに好きだって言ってくれたんですけど……その時……どうすればいいかわからなかったんです、望君のことが好きって気持ちはあったんですけど……どうすればいいかわからなくって……泣き崩れちゃったんです」
冬花にとっては昨日のことのように感じる出来事だ、告白してくれた望を傷付けてしまった罪悪感のあまりに、自分の我が儘でなかったかのように翌日も望と普通に接し、望も今まで通り接してくれた。
「あの後も望君は今まで通りに接してくれたんです。何事もなかったことみたいに……」
「そう……今はいいかもしれないけど、すれ違ったままにしておくと……いずれ取り返しがつかなくなって後悔する日が必ず来るわ」
香澄姉さんの眼差しは真剣だ、おしとやかだけど厳しい一面もある人だ。
「このままじゃいけないってわかってます……でもやっぱり怖いんです」
冬花はしゅんとしながらスイカを口にすると、香澄姉さんもスイカを一切れ取って上品に一口頬張って精一杯味わいながら言う。
「確かに怖いって気持ちもわかるわ、もしかするとその望君も同じ気持ちで悩んでると思うわよ……勇気を出して伝えてみたら?」
香澄姉さんは真っ直ぐな眼差しで見つめ、冬花は果たして自分に出来るのかどうかと自分自身に問い、唇を噛む。
「一人で思い悩まなくていいのよ、あなたにはどんな時も一緒にいてくれる友達がいる。だから……勇気を出して、望君だってきっと受け止めてくれるわ」
冬花は俯く、果たして望は受け止めてくれるのだろうか香澄姉さんは見つめて微笑みながら唐突に話題を変える。
「ねぇ……冬花ちゃんの友達ってどんな子?」
「えっ?」
冬花は顔上げて見つめると、香澄姉さんは母性的な眼差しで言う。
「聞かせてくれる? あなたのお友達や幼馴染みの望君との青春!」
香澄姉さんは話しを聞きたいらしい、冬花はいつの辺りから話そうかな? と思い浮かべながら話す。
望君は幼稚園の頃から友達なんです。いつの頃から覚えてないくらい……一番幼い頃の記憶にはもう望君と仲良くしていて、小学校六年間一緒で数え切れないくらい一緒に遊んだり、笑ったり、泣いたり、喧嘩したり、馬鹿やったりしてたんです。
そういえば! 一つ、幼稚園の頃に望君の家族と阿蘇でキャンプに行ったんです。その時、望君と二人で夜空を見上げて約束を交わしたんですよ。
あたし、大きくなったら望君のお嫁さんになるって! 望君覚えてるかな……光君と出会ったのは中学入ってからですね、一年生の時だけ望君と同じクラスで顔見知りだったんですよ。
高校入って帰る方向が一緒だったから、放課後一緒に街に寄り道したり休みの日には一緒に遊んで、お祭りに行ったりして……彗星の夜は三人で見上げるって約束したんです。
そんな時、光君が連れて来たんです……去年、吹奏楽部辞めて今年新しい顧問の先生がやってきて、吹奏楽部の雰囲気が良くなって、友達に戻ってきて欲しいって求められて悩んでる夏海ちゃんに。
夏海ちゃん居場所を無くしちゃって同じようにテニス部を辞めて、居場所を無くしちゃった春菜ちゃんと出会って……光君言ったんです。
みんなで居場所を作ろうって、それがみんなを導いてくれた。
それから春菜ちゃんと同じテニス部の千秋ちゃんも一緒になって、千秋ちゃん……春菜ちゃんとは正反対で部活でもライバル同士だったんですけど、本当は友達でいたい。
だけど素直な気持ちが伝えられなくて……一緒に勇気を出して素直な気持ちを伝え合おうねって……。
それでこの前のお祭りで、ようやく自分の気持ちを伝えられたんです。
冬花は夏空を見上げる、みんな今どうしてるかな? 香澄姉さんは母性的な女神様のように微笑んで言う。
「青春ね……羨ましいわ、その子も伝える時はきっと怖かったかもしれない、冬花ちゃんも怖いかもしれないけど……だけど、後で振り返ったらきっと素晴らしい思い出になるわ」
香澄姉さんの言葉に冬花は「あっ」と気付いてみんなそれぞれ違う形で勇気を出していたことに気付く。
そうだ、千秋ちゃんだって勇気を出して思いを伝えたんだ。千秋ちゃんだけじゃない、望君も、光君も、夏海ちゃんや春菜ちゃんだって!
今度はあたしが勇気を出す番だ!