キコがなんとか、
アスファルトの道路に出て
一息を着いた頃
テクテクと歩く処を 、
後ろから上がってくるグレーの
軽自動車にクラクションを
鳴らされた。
『プッ!』
なんやろか?
呼ぶ様に鳴らされた音に、
キコは 怪訝な顔で
振り向く。
少し、
グレーの軽自動車は
速度を
キコに合わせて、
頭1つ分だけ出すと、
止まった。
『ウーーーーーーーン』
ウインドウが開く。
「大丈夫ですかー!どこまで、
行きますー?乗りますかー?」
立て続けにキコに質問する
女が、運転席の窓から
顔を出してきた。
ポニーテールをした
長い黒髪。
気の強そうな口調とは裏腹に、
意外と清楚な
美人顔だ。
ただ、窓に片腕を引っ掛け
出している様は、
どこか、、
組の姉さん。
キコの頭に
真っ先に浮かんだのは、
前職の 『現場』で見た、
輩をまとめる、独特のオーラの
女人達だった。
「あのぉ、上のお寺さんとか
行きはりますぅ?それなら、
ありがたいんですけど。 」
キコは、声を掛けてきたのが
女人だけと、しっかり確認すると、
相手の申し出に乗っかる
事にする。
「いいですよー。あたしも、
上にある お寺に行こかと、
思ってたんでー。どうぞー。」
ポニーテールを黒光りさせて、
キコに、
助手席を指差す彼女。
何故か、
カーステから演歌が聞こえる。
ラジオらしかった。
「上のお寺さんて、
有名ですのん?ちょっと道に
迷ってたんで、そーゆーのん、
わからんで 歩いてたんです。」
キコは、前職もあるが
性格的に初対面でも
緊張はしない。恐いもの知らずと
よく揶揄されたものだ。
「なんか、ご利益あるんなら、
わたしも、
お参りしてみましょかね。」
キコは隣で運転する
相手に、空気を読んで、
話題をふる。
「ご利益いうかー、、
知りませんー?
『亡者の古道参り』ここですよ」
フロントガラスから、
視線を動かすこと無く、
ポニーテールの彼女は答えた。
「『亡者の古道参り』ですかぁ」
キコも、フロントガラスを
見たまま、おうむ返しに
答えたが、
彼女の言葉に、俄然
まさかやけど、この姉さん、
幽霊とかと、ちゃうやろか。
寒くなって、隣の足元を見る。
キコの出身は、
古都郊外の酒蔵の町。まあまあ、
妖怪忌憚な話もある。
因習深い都も近ければ
まずまず迷信深くもなるもの。
「それでぇ、人が少ないんです
かねぇ、古道の割にねぇ。」
と、話して 誤魔化すうちに、
少し鬱蒼しさが晴れて、道が
開けた。
キコの話に合図ちを打つ
わけでない運転席の彼女が、
徐に
「あれー、なんや?けったいな
ソーラーやなぁー。あ、
すんませんねー。ほら?
あれ、なんですかねー。」
驚いて口にした方向を見ると、
確かに運転側の山の傾斜に、
白く光る板が並んでいる。
にしても、並びがおかしい。
「ちょっと気に成りません?
車、停めていいですかー。」
運転する彼女が止めれば
キコも文句は言えるはずなく。
白い板並びの横路肩に
車が寄せられ、仕方なくキコも
一緒に外に出る。
「なんやー!これー!」
一見すると判らないが、
少し引いて俯瞰すると、
規則的な白い板の意味が嫌でも
判った。
運転手の彼女は、
はしゃぎながら電話で写真を
撮り始め、
キコに
「すんません。ちょこっと、
撮ってもらって、ええですかー」
と、その形を入れて写真取りを
ねだってきた。
ホンマやのん?これとりはるん?
内心、キコは、辟易しつつも
一泊の恩ならぬ一車の恩だ。
「いいですよぉ。」
お客さん用の、笑顔を張り付けて
電話の画面を覗く。
彼女のポーズに、若干引きつつ、
『カシャ』
シャッター音を鳴らした。
「これで、いいですのん?」
キコが彼女に写真を
確認してもらうと、
「あー、ええですやん!ええ!
ありがとうーございますー。」
と、彼女は 今度は
満面の笑みを顔に湛えて
チョチョイチョイと電話を操作すると、
キコに 電話の
表示画面を見せてくる。
そこには、
SNSにアップされた、
キコの手で撮れたてホヤホヤの
白い巨大 『卍』マークの横で、
中指を立てて、ガンを飛ばす
ポニーテールの清楚な美人の
『真面、卍。』の文面が
誰かに向けて 吼えていた。
アスファルトの道路に出て
一息を着いた頃
テクテクと歩く処を 、
後ろから上がってくるグレーの
軽自動車にクラクションを
鳴らされた。
『プッ!』
なんやろか?
呼ぶ様に鳴らされた音に、
キコは 怪訝な顔で
振り向く。
少し、
グレーの軽自動車は
速度を
キコに合わせて、
頭1つ分だけ出すと、
止まった。
『ウーーーーーーーン』
ウインドウが開く。
「大丈夫ですかー!どこまで、
行きますー?乗りますかー?」
立て続けにキコに質問する
女が、運転席の窓から
顔を出してきた。
ポニーテールをした
長い黒髪。
気の強そうな口調とは裏腹に、
意外と清楚な
美人顔だ。
ただ、窓に片腕を引っ掛け
出している様は、
どこか、、
組の姉さん。
キコの頭に
真っ先に浮かんだのは、
前職の 『現場』で見た、
輩をまとめる、独特のオーラの
女人達だった。
「あのぉ、上のお寺さんとか
行きはりますぅ?それなら、
ありがたいんですけど。 」
キコは、声を掛けてきたのが
女人だけと、しっかり確認すると、
相手の申し出に乗っかる
事にする。
「いいですよー。あたしも、
上にある お寺に行こかと、
思ってたんでー。どうぞー。」
ポニーテールを黒光りさせて、
キコに、
助手席を指差す彼女。
何故か、
カーステから演歌が聞こえる。
ラジオらしかった。
「上のお寺さんて、
有名ですのん?ちょっと道に
迷ってたんで、そーゆーのん、
わからんで 歩いてたんです。」
キコは、前職もあるが
性格的に初対面でも
緊張はしない。恐いもの知らずと
よく揶揄されたものだ。
「なんか、ご利益あるんなら、
わたしも、
お参りしてみましょかね。」
キコは隣で運転する
相手に、空気を読んで、
話題をふる。
「ご利益いうかー、、
知りませんー?
『亡者の古道参り』ここですよ」
フロントガラスから、
視線を動かすこと無く、
ポニーテールの彼女は答えた。
「『亡者の古道参り』ですかぁ」
キコも、フロントガラスを
見たまま、おうむ返しに
答えたが、
彼女の言葉に、俄然
まさかやけど、この姉さん、
幽霊とかと、ちゃうやろか。
寒くなって、隣の足元を見る。
キコの出身は、
古都郊外の酒蔵の町。まあまあ、
妖怪忌憚な話もある。
因習深い都も近ければ
まずまず迷信深くもなるもの。
「それでぇ、人が少ないんです
かねぇ、古道の割にねぇ。」
と、話して 誤魔化すうちに、
少し鬱蒼しさが晴れて、道が
開けた。
キコの話に合図ちを打つ
わけでない運転席の彼女が、
徐に
「あれー、なんや?けったいな
ソーラーやなぁー。あ、
すんませんねー。ほら?
あれ、なんですかねー。」
驚いて口にした方向を見ると、
確かに運転側の山の傾斜に、
白く光る板が並んでいる。
にしても、並びがおかしい。
「ちょっと気に成りません?
車、停めていいですかー。」
運転する彼女が止めれば
キコも文句は言えるはずなく。
白い板並びの横路肩に
車が寄せられ、仕方なくキコも
一緒に外に出る。
「なんやー!これー!」
一見すると判らないが、
少し引いて俯瞰すると、
規則的な白い板の意味が嫌でも
判った。
運転手の彼女は、
はしゃぎながら電話で写真を
撮り始め、
キコに
「すんません。ちょこっと、
撮ってもらって、ええですかー」
と、その形を入れて写真取りを
ねだってきた。
ホンマやのん?これとりはるん?
内心、キコは、辟易しつつも
一泊の恩ならぬ一車の恩だ。
「いいですよぉ。」
お客さん用の、笑顔を張り付けて
電話の画面を覗く。
彼女のポーズに、若干引きつつ、
『カシャ』
シャッター音を鳴らした。
「これで、いいですのん?」
キコが彼女に写真を
確認してもらうと、
「あー、ええですやん!ええ!
ありがとうーございますー。」
と、彼女は 今度は
満面の笑みを顔に湛えて
チョチョイチョイと電話を操作すると、
キコに 電話の
表示画面を見せてくる。
そこには、
SNSにアップされた、
キコの手で撮れたてホヤホヤの
白い巨大 『卍』マークの横で、
中指を立てて、ガンを飛ばす
ポニーテールの清楚な美人の
『真面、卍。』の文面が
誰かに向けて 吼えていた。