「うあーーーー!!誰かー!
溺れる!溺れてまうー!!」

チョウコの声が響いた時
再び

『パーン!』

短い飛沫音と共に、1人が
恐ろしく美しいフオームで
飛び込んだ!!

「え」

リンネがその背面を捉えると
まるで金色に発光するような
オーラさえ見える
人影は
遍路服を脱ぎ捨て
インナーだけの姿で
みるまに、老人にしがみついて
いる老女に向かって
顔を凄い勢いでビンタした!
一瞬大人しくなる
老女の後ろにまわって
脇に肩手を入れると
沈められていた
老人が頭を出す。

彼女は海から即座に

「フロート!」と絶叫した。

とたんに
沢山のタイヤ浮きが
投げ込まれる。

周りの重鎮が
船や港のへりに吊ってある
浮きを投げ込んだのだ。

最初に飛び込んだ
老人にむかって
重鎮達が皆、叫んでいる。

港の消防が何人も
駆けつけ
投げ込まれ浮きの紐を
港の重鎮も
クラシタもルイも引っ張り、
なんとか桟橋に
浮き輪達ごと
海に浸かる3人を移動させる。

そこから、
何人もの消防隊員の手で
ぐったりとなる
転落者達は引き揚げられた。

消防の人口呼吸が老女に
必死に行われる横に
老人も飲んだであろう海水を
吐き出して、肩で息をする。

そして引っ張りあげられた
令嬢も桟橋に
インナー姿のまま
大の字に
寝転がり大きく息をしている。

ハジメは電話を片手に、
桟橋に引き揚げられた令嬢に
血相を変えて駆け寄って、
白のロングコートをかけている

誰もか
大声を上げて、
救われた命に安堵と、
無茶の飛び込みに
叱責する声と、
港は人の意識と怒号が渦になる。

その全てが まるで
無声映画のようで、


チョウコ、キコ、
リンネ達も 腰が抜けたように
コンクリートの防波堤に

へたへたと
座り込んだ。

桟橋のヘリに

当初、令嬢だけだった乗車に
加えて
毛布姿の老人と
タンカーに乗る老女も入るのが
見える。

浮きの紐を引き揚げていた
クラシタとルイが
疲労困憊の顔で
座り込んだ3人の元に戻る。

冬にも関わらず
その誰もが
汗だくで
そのまま寝転びながら

「ハジメさん、、ヘリに同乗
します。全員、意識、、あり
ますから、、大丈夫、です、」

クラシタが、静かに
蒼空に向かって

独り言のように 告げた。