篠宮さんに連れられて、最近できたばかりの駅前のコーヒーショップに入る。
篠宮さんは生クリームがたっぷりのった冷たいコーヒーをふたつ買い、おごりだと言ってわたしにくれた。
まぁ、そっちが誘ってきたんだから、当然と言えば当然だけど。
バス通りが見えるカウンター席に並んで座ると、篠宮さんはわたしに言った。
「こんなこと頼めるの……水原さんしかいないの」
この前はいきなり現れて、「碧人の邪魔をするな」と言ったくせに、今日はずいぶんしおらしい。
「碧人、部活出てないの?」
わたしの声に、篠宮さんが首を横に振る。
「ううん、出てるよ、ちゃんと」
篠宮さんは少し考え込むようなしぐさをしたあと、顔を上げてわたしを見た。
「でも走れないの」
「走れない?」
意味がわからなくて首を傾げる。
「そう、走れない。部活には来るし、トレーニングもしっかりやってる。でもスタートラインに立つと、どうしても前に進めないの」
どういうこと?
「体調が悪いのかって聞いても、そうじゃないって言うし。本人も走る気はあるみたいなんだけど、昨日も苦しそうにしゃがみこんじゃって」
バスに乗れないわたしと同じだ。
「少し休んだほうがいいって言ったんだけど、練習ずっとサボってたからもう休めないって、意地になってるみたいで……でもつらそうで見てられないよ」
わたしはテーブルの上でぎゅっと手を握りしめた。窓の外を、路線バスが通りすぎていくのが見える。
篠宮さんは生クリームがたっぷりのった冷たいコーヒーをふたつ買い、おごりだと言ってわたしにくれた。
まぁ、そっちが誘ってきたんだから、当然と言えば当然だけど。
バス通りが見えるカウンター席に並んで座ると、篠宮さんはわたしに言った。
「こんなこと頼めるの……水原さんしかいないの」
この前はいきなり現れて、「碧人の邪魔をするな」と言ったくせに、今日はずいぶんしおらしい。
「碧人、部活出てないの?」
わたしの声に、篠宮さんが首を横に振る。
「ううん、出てるよ、ちゃんと」
篠宮さんは少し考え込むようなしぐさをしたあと、顔を上げてわたしを見た。
「でも走れないの」
「走れない?」
意味がわからなくて首を傾げる。
「そう、走れない。部活には来るし、トレーニングもしっかりやってる。でもスタートラインに立つと、どうしても前に進めないの」
どういうこと?
「体調が悪いのかって聞いても、そうじゃないって言うし。本人も走る気はあるみたいなんだけど、昨日も苦しそうにしゃがみこんじゃって」
バスに乗れないわたしと同じだ。
「少し休んだほうがいいって言ったんだけど、練習ずっとサボってたからもう休めないって、意地になってるみたいで……でもつらそうで見てられないよ」
わたしはテーブルの上でぎゅっと手を握りしめた。窓の外を、路線バスが通りすぎていくのが見える。