鴨ちゃん先生に「またね」と言って保健室を出た。

 昇降口に向かって歩いていると、渡り廊下で陸上部が練習していた。
 わたしはその様子を横目でちらっと見ながら通り過ぎる。

 昇降口で靴を履き替え、雨のなかに傘を開こうとしたら、女の子たちに声をかけられた。

「水原さん、いま帰り?」

 同じクラスのテニス部の子たちだ。最近よく教室でも話しかけてくれる。

「うん。みんなも?」
「そう。雨で部活休みだからさぁ、これから遊びに行こうかと思ってて」
「カラオケとかねー」

 女の子たちは一瞬目くばせをしあったあと、ひとりの子がわたしに言った。

「ねぇ、水原さんも一緒に行かない?」
「え」

 驚いた。だってわたしみたいなクラスで浮いている人間を、誘ってくれるなんて思ってもみなかったから。

「あっ、もちろん用事があるならいいんだけど」
「そうそう。でもみんなで話してたんだよ。水原さんも誘おうよって」

 わたしはぼうぜんと立ちつくす。

「わたしたちみんな、水原さんともっとしゃべってみたくて……え、水原さん?」

 女の子たちがあせっている。
 だってわたしはみんなの前で突っ立ったまま、ぽろぽろ涙をこぼしていたから。