しとしとと降る雨が、誰もいないグラウンドに溜まっていく。
 わたしは保健室の窓辺に座って、それをぼんやりと眺めている。

 ここ数日、雨はずっと降り続いていて、このまま永遠とやまなかったら……なんて、ふと考える。
 グラウンドも、校舎も、バス通りも、わたしの家も、雨で水浸しになっちゃって、やがてあふれて、わたしたちは溺れて……夏は永遠にやってこない、なんて。

「あら水原さん、いたんだ」

 カラリと引き戸が開き、鴨ちゃん先生の風鈴みたいに澄んだ声が響く。

「『いたんだ』って……ひどいなぁ。せっかく遊びに来てあげたのに」

 廊下から、生徒たちの笑い声が聞こえてくる。
 雨の日の放課後の校舎は、いつもより余計に騒がしい。

 鴨ちゃん先生はふふっと笑って、持っていた書類を机の上に置いた。

「最近ちゃんと授業受けてるみたいだね」

 先生の声を聞きながら、わたしはまた窓の外へ視線を移す。

「受けてるよぉ、エライっしょ?」
「うん。エライ、エライ」

 窓辺に来た先生が、わたしの頭をふわふわとなでる。
 不満そうに口をとがらせてみたけれど、ほんとうはすごく心地よかった。