「もしかしてずっと、外にいたの?」

 お母さんが言うように、碧人の髪も制服も、しっとりと濡れていた。
 わたしはそんな碧人の姿を眺めながら、最後に碧人がこの部屋に来たのはいつだったっけ、なんて頭の隅で考える。

「おまえが無視するから」

 碧人がぼそっと答えた。わたしはあわてて、持っていたスマホを見せる。

「む、無視してたわけじゃないよ。気づかなかっただけなの。メッセージきてるって、いま知って……」

 碧人は不審な目でわたしを見ている。

「ほんとかよ」
「ほんとだってば! ていうか、そんなところで待ってないで、うちくればよかったじゃん」
「いきなりなんて、これるわけないだろ? 『碧人には会わない』なんて言われてさ」
「え?」

 碧人は疲れたように、わたしのベッドの上に腰を下ろした。

「学校で聞いたよ。篠宮に会ったんだってな」
「……うん」

 碧人が深くため息をつく。

「そんで、おれには会わないって言ったんだろ?」
「言ったよ。だってそのほうがいいと思ったから」
「勝手に決めんなよ! カンケーないやつに言われたくらいで!」

 碧人が少し大きな声を出す。わたしはぎゅっと唇を結んだ。
 碧人は頭に手を当てて、くしゃくしゃと自分の髪をかきまわす。