「ねぇ」

 篠宮さんがわたしを呼んだ。わたしは足を止めて振り返る。

「まだなにか用?」
「その足……」

 少し言いにくそうに、篠宮さんがつぶやいた。
 わたしは篠宮さんの聞きたいことを、答えてあげる。

「ああ……よくわかったね。中学のときにケガしちゃって……ちょっと曲がっちゃったんだよね」

 いつものように、へらっと笑う。たいしたことないよ、って伝えるために。
 でも篠宮さんは、顔をしかめたままだった。

「じゃあね」

 わたしはそんな篠宮さんを残して、ひとりで家までの道を歩いた。