「昨日、先輩たちにぜんぶ話したの。だから碧人くん、いまごろ注意受けてるはず……でも……」

 篠宮さんがわたしをにらむ。

「悪いのはあなたなんじゃない?」

 校門から生徒たちがぞろぞろと出てきた。そして険悪ムードたっぷりのわたしたちを、横目で見ながら通り過ぎていく。

 こっち見ないでよ。見世物じゃないっての。
 けれど篠宮さんは、まわりなど気にせず続ける。

「だって入学してからいままで、碧人くんが授業や部活をサボることなんて、一度もなかったもの。先輩たちからも、かわいがられてたし……あなたがこんなところまで、碧人くんを呼びつけてたんでしょ!」

 わたしはなにも言い返せなかった。

 あの日、「会いたい」ってメッセージを送ってしまったのは、わたしだ。
 そしたら碧人が、わたしに会いにきてくれた。
 だからこの子の言うとおり、碧人を呼びつけたのはわたし。

 だけど……わたしと碧人の間には、最近知り合ったばかりのこの子にはわからない、もっともっと大切なことがあって……

『おれにはもう……夏瑚しかいないから』

 碧人の言葉を思い出し、胸がつまる。

 気づけばわたしは、篠宮さんに向かって言っていた。