しばらく歩くと、碧人の住んでいる家についた。
 静かな住宅街に建つ、三階建てマンションの二階だった。

「ごめん、汚くて」

 碧人はわたしを部屋に入れると、ちょっと恥ずかしそうに言った。

 リビングには脱ぎっぱなしの服や、食べかけのお菓子や、空のペットボトルなどがだらしなく置かれていて、たしかに散らかっている。
 キッチンの流しには洗っていないお皿が積まれているし、干した洗濯物が部屋のなかにたくさんぶら下がっていた。

 だけどそれが碧人の家だって、わたしは幼いころから知っていたから、懐かしいなぁ、なんて思ってしまった。

「片づけなって、いつも言ってるじゃん」
「わかってるけど。あ、なんか飲み物持ってくるから、テキトーに座ってて」

 座っててって言われても、座るとこないし。
 碧人もおじさんも、ほんとうに片付けが下手くそなんだ。

 わたしは碧人のジャージや、おじさんのトレーナーを軽くたたんでソファーの上に置く。それからテーブルの上のゴミをまとめて、そのへんにあったレジ袋に捨て、積み重なった漫画や本を端に寄せた。

「スポドリでいいよな」
「うん」

 碧人がペットボトルのスポーツドリンクを、グラスについでくれた。わたしはそばに座って、それを見ている。

「なんかへんな感じ。昔に戻ったみたい」

 小学生のころ、わたしは学校から帰ると毎日、おとなりの家に遊びに行っていた。
 おとなりのおじさんはいつも帰りが遅くて、ひとりで留守番していた碧人が、寂しそうにしてたから。

 それは中学生になっても続いていて、部活が終わったあと、碧人の部屋でお菓子を食べたり、ゲームをしたりして遊んだ。