「マキ先生を好きになるなんて、ぜったいありえない」

 わたしは碧人から手を離す。そしてそっとつぶやいた。

「碧人こそ……好きなひととか、いなかったの?」

 バスの中で最後に聞いた、美冬の声を思い出す。

『碧人くんに……好きだって』

 あの直後、バスにトラックが突っ込んできて……美冬は自分の想いを、碧人に伝えることができなかった。

「いたよ……好きなひと」

 碧人が答えた。

「いまも……いるよ」

 碧人の視線が痛くて、わたしは顔をそむける。
 自分から聞いたくせに、その先はどうしても聞けなかった。

 わたしは碧人のとなりで、夜空を見上げる。
 そこにはあの肝試しの夜と同じくらい、たくさんの星が瞬いていた。