碧人と一緒に、さらに夜道を歩く。

 わたしがよろよろしていたら、碧人が手をつかんだ。そしてその手を引き、まっすぐ前を向いて歩いていく。
 わたしは碧人の背中を見ていた。碧人の背中が、すごく大きく見える。

 あたりはもう真っ暗になっていて、空には星が輝いていた。

「そういえば……」

 ふと思い出したことを口にする。

「中二の夏の合宿のとき、肝試し大会やったよね」

 先輩がオバケ役をやってくれて、宿舎のそばの林を、二人一組でドキドキしながら歩いたんだ。そのときのペアが、碧人だった。

「……そんなこともあったな」
「くじ引きであんたとペアになっちゃって、サイアクだったよ」
「それはこっちのセリフだ」

 前を向いたまま言った碧人が、思い出したように振り返る。

「てか、おまえ、めっちゃビビってたよな、あのとき。キャーキャー悲鳴上げてさ。おれにしがみついてきて……」
「だってあんなの怖いに決まってるじゃん。先輩たちのオバケ、レベル高すぎだよ」
「は? 先輩たちがやってるってわかってるのに、なんで怖いのかわかんねぇ」
「なによー! 怖いもんは怖いんだから、いいでしょー!」

 わたしが怒ったら、碧人がははっと空を見上げて笑った。
 ああ……碧人の笑顔を見ると、ホッとする。

 すると碧人が、ひとりごとみたいにつぶやいた。