「ええー! ここに入れてあったアイスは?」

 冷凍庫をのぞきこみ、わたしは叫んだ。マンション五階にある、この3LDKの部屋全体に響くくらいの大声で。

「え、あのアイス、お姉ちゃんのだったの?」

 リビングで漫画を読んでいた中二の妹、万緒(まお)が、ソファーに座ったまま首だけ向ける。

「わたしのに決まってるじゃん!」
「ごめーん。お母さんが買ってきてくれたのかと思って、食べちゃった」

 わたしは冷凍庫を閉めると、ぺろっと舌をだした万緒の両脇に手を差しこんだ。

「こんのー! 帰ったら食べるの楽しみにしてたのにー! くすぐりの刑にしてやるからなー!」
「キャー! やめてー! おねえちゃーん! ひゃはははは!」

 わき腹が弱点の万緒が、体をよじって笑いだす。リビングが一気に騒がしくなる。
 でもわたしは、万緒の笑い声が好きだ。だからこんなふうにいつも笑っていてほしい。