弾ませていたボールを、碧人が手にした。それから真剣な表情で目標を定め、シュートをする。だけどボールはボードにぶつかり、地面に弾んだ。
「くっそ……」
碧人が悔しそうに顔を歪める。わたしは黙ってその姿を見つめる。
ボールを拾った碧人が、もう一度シュートした。今度はリングに当たって弾かれた。碧人は再びボールを拾う。
梅雨時の、水分を含んだ空気が肌にまとわりつく。碧人の額に、汗がうっすらとにじんでいる。
碧人がシュートを放つ。だけど入らない。舌打ちをした碧人に、わたしは叫ぶ。
「碧人! 集中!」
わたしの声に、碧人が肩をびくっと震わせた。
「集中だよ、集中! しっかり!」
碧人が唇をかみしめる。わたしは碧人の向こうに、気配を感じた。
瑛介くん、一成、美冬、響ちゃん。
なんだ、みんなそこにいるんじゃん。
碧人がまっすぐゴールを見つめる。すうっと動いた腕が、ボールを放つ。
「入れぇっ!」
わたしと碧人の声が重なった。
ボールは綺麗な弧を描き、リングの間をすとんっと抜けた。
「入ったー!」
碧人が飛びあがってガッツポーズする。わたしも大きく手を叩いて飛び跳ねた。
「やったじゃん!」
「おう! やった!」
碧人は笑っていた。子どものころのような無邪気な顔で。
そうだ。碧人は、こんなふうに笑う子だった。
碧人の笑顔、久しぶりに見たなぁ……
でも碧人はすぐにわたしから顔をそむけ、転がったボールを拾いに行った。そしてそれを弾ませながら、黙りこむ。
「くっそ……」
碧人が悔しそうに顔を歪める。わたしは黙ってその姿を見つめる。
ボールを拾った碧人が、もう一度シュートした。今度はリングに当たって弾かれた。碧人は再びボールを拾う。
梅雨時の、水分を含んだ空気が肌にまとわりつく。碧人の額に、汗がうっすらとにじんでいる。
碧人がシュートを放つ。だけど入らない。舌打ちをした碧人に、わたしは叫ぶ。
「碧人! 集中!」
わたしの声に、碧人が肩をびくっと震わせた。
「集中だよ、集中! しっかり!」
碧人が唇をかみしめる。わたしは碧人の向こうに、気配を感じた。
瑛介くん、一成、美冬、響ちゃん。
なんだ、みんなそこにいるんじゃん。
碧人がまっすぐゴールを見つめる。すうっと動いた腕が、ボールを放つ。
「入れぇっ!」
わたしと碧人の声が重なった。
ボールは綺麗な弧を描き、リングの間をすとんっと抜けた。
「入ったー!」
碧人が飛びあがってガッツポーズする。わたしも大きく手を叩いて飛び跳ねた。
「やったじゃん!」
「おう! やった!」
碧人は笑っていた。子どものころのような無邪気な顔で。
そうだ。碧人は、こんなふうに笑う子だった。
碧人の笑顔、久しぶりに見たなぁ……
でも碧人はすぐにわたしから顔をそむけ、転がったボールを拾いに行った。そしてそれを弾ませながら、黙りこむ。