『夏瑚! おれが何回シュート入るか、数えてて!』

 中学三年生の夏。公式試合が終わると、あとはお楽しみの陸上競技会を残すのみとなった。

 あのころ男子三人はバスケにはまっていて、夏休みの練習後、毎日のようにシュート対決をしていた。
 ひとり五回シュートして、誰が一番多くゴールできるか、競い合っていたんだ。

 陸上部なのにバスケもうまくて、パーフェクトを決められるのは瑛介くんだった。
 それに惜しくも負けてしまうのが、一成。碧人はいつもビリだった。

『くそっ、なんでだよ!』

 悔しそうな碧人を一成が笑う。瑛介くんはそんな碧人に、冷静にアドバイスする。

『碧人は集中力が足りないんだよ』

 ぶすっとしながらも、碧人は瑛介くんの声に耳を傾ける。

 碧人は瑛介くんの、なにごとも冷静に、そして完璧にこなせるところを、尊敬していたんだ。
 それに瑛介くんが、実は陰ですごく努力しているところも。