口のなかでミルク味のキャンディーを、ガリっとかじる。粉々に砕けたキャンディーが、舌の上でざらつく。

 保健室の机に頬杖をつき、窓の外を眺めた。
 今日は朝からよく晴れている。梅雨の晴れ間ってやつだ。

 わたしは机の上のスマホの画面に、視線を移す。

『みねさき三中陸上部!』

 なにげなくタップしたトーク画面。
 わたしはあの日から、みんなにメッセージを送っていない。

『返事のこない相手にずっと話しかけたりして……毎日毎日バカみたいに……』

 碧人の言葉を思い出す。

「どうせわたしはバカだもん……」

 ごとんっと机に頭を落とした。そのままもう一度、窓の外を見る。
 真っ青な空は、もう夏の色みたい。

 保健室にチャイムの音が響いた。わたしはスマホをポケットに入れ、ゆらりと立ち上がる。

 上履きを引きずりながら廊下へ出ようとしたら、ちょうど戻ってきた鴨ちゃん先生とばったり会った。

「あら、もうお帰り?」
「う、うん」
「今日はやけに早いんだね? いつもわたしが声をかけるまで、帰らないくせに」

 鴨ちゃん先生がくすっと笑う。わたしはちょっと頬を膨らます。

「今日はちょっと急いでるの!」
「ふーん、そうなんだ。気をつけて帰りなよ」

 鴨ちゃん先生が小さく手を振る。わたしは「また明日も来る」と言って、廊下を速足で歩いた。