放課後の校舎はいろんな声や音がする。

 サッカー部の掛け声。野球部の金属バットの音。
 吹奏楽部の楽器の音色。合唱部の歌声。

 どれもすごく青春っぽい。

 そんななか、自分だけが場違いな気がして、どうしようもなく落ち着かない。

 笑い声をあげた女子生徒たちが、パタパタと走って、わたしを追い越していく。
 「廊下を走ったらあかん!」なんて、心のなかで生活指導の先生のモノマネをして、ぷっと小さく噴きだす。

 A棟とB棟を結ぶ渡り廊下から、グラウンドを駆ける陸上部の姿が見えた。
 わたしは教室へ戻る足を止め、少しの間それを眺める。
 グラウンドの上の空は、どこまでも青く晴れ渡っていた。

「いい天気……」

 ひとりつぶやいたあと、ポケットのスマートフォンを取りだし、トークアプリの画面を開く。

『みねさき三中陸上部!』

 グループ名をタップしてから、スタンプを送る。
 『元気!?』ってしゃべっている猫のイラスト。いつもわたしが最初に送るやつだ。