「ねぇ、ほんとうに部活休みなの?」

 碧人の顔をのぞき込んで聞く。

「わたしちょっと調べたんだ。西高陸上部って、けっこう強いじゃん。雨降ったくらいで休んだりしないでしょ?」

 碧人はなにも答えない。わたしは前を向いて続ける。

「それにどんなにダッシュで来たって、西高からはかなりかかるよ。碧人、ちゃんと授業受けてるの? まさかここに来るためにサボってるんじゃ……」
「おまえに言われたくない」

 ぼそっと碧人がつぶやいた。わたしは思わず「はぁ?」と言って、再び碧人の顔をのぞき込む。

「おまえだって毎日、保健室で授業サボってるんだろ?」

 たしかにメッセージにそう書いた。

「ひとのこと、言えないじゃん」
「わ、わたしはいいの! でも碧人はダメ!」
「なんだよその理屈。意味わかんねーんだけど」

 ふてくされた顔の碧人がわたしに視線を合わせた。
 あれ、なんか久しぶりに目が合った気がする。三日間、毎日一緒に歩いていたのに。

 碧人はじっとわたしを見たあと、いきなり手をつかんできた。

「こっち来い」
「は?」

 青信号の横断歩道を渡る。碧人に手を引っ張られながら。

「な、なんなの?」
「おごってやるから」
「え?」

 わたしたちはいつのまにか、コンビニの前に立っていた。マンションの近くのコンビニだ。

「アイスおごってやるから……一緒に食べようぜ」

 わたしの顔を見ないまま、碧人がぼそっとつぶやいた。