昇降口で靴を履き替え、外へ出る。水たまりを踏みつけながら歩き、校門を出たところで立ち止まった。
 透明なビニール傘を片手に持ち、もう片方の手でスマホを眺めていた碧人が顔を上げる。

 雨が降り続いた三日間、碧人は毎日放課後、ここに来た。
 呼んでもいないのに。高校も家も遠いのに。

 碧人はわたしの学校まで来て、一緒に家まで並んで歩き、そしてひとりで帰るんだ。
 「部活は?」って聞くと、いつも「今日は休み」って答える。

「雨……やんだよ?」

 わたしは碧人の前に立って言う。

「うん」
「部活は?」
「休み」

 碧人がつぶやいて、いつものようにゆっくりと歩きだす。わたしの家の方向へ。
 わたしは動きにくい足を無理やり速め、そんな碧人のとなりに並んだ。